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当たりはずれのない義歯

当たりはずれのない義歯

歯科治療のなかでも入れ歯は、歯科医師・歯医者の技術、知識と経験、技工士の
差がでやすい分野といわれています。

なぜなら、

1.患者様の状態
2.完成までの歯科医師の力
3.技工士の力
4.入れ歯の調整力

以上のものが複雑に絡み合うからです。それでは上記の4つをひとつずつ見ていきましょう。

1.患者様の状態

〇 「私の新しい入れ歯全然痛くなかったから、あなたもあそこの歯医者でつくってもらなさい」
×  「何回も通って、やっとできた入れ歯なのに、入れたら痛くて全然使えなかった」

入れ歯談義では、よく耳にするフレーズです。
ですが、どちらもあっているようで大きく見落としていることがあります。

偶然痛くなかったかもしれません

実はどんな名人が作ったいい義歯でも調整は必要です(詳しくは後述の調整力のところで)

骨もしっかりしていて、歯の残り方もよかったのかもしれません

どんな作り方でも痛みがでにくいお口の方、逆に安定させるための手法が限られている方もいます。

入れ歯は製作過程においてコンマ数ミリですが、誤差が生じます。(この誤差をなくすため義歯に
力を入れている先生は様々な努力をしています)

また、製作の際に技工士さんは硬い硬い石膏模型上で入れ歯を作っていきます。
しかし、実際のお口の中の歯茎は石膏のように硬いわけでなく、歯茎が厚いところや薄いところが混在しています。
そのため、入れ歯が噛んで沈んだところまで完全に再現することはできません。

2.完成までの歯科医師の力

義歯(特に総義歯)に関しては、いいとされる義歯を見てきた歯科医師はかなり限られた数になります。

一般的に総義歯は一つの医院で年間に数ケースしかないといわれ、
その都度技工士さんに丸投げして作る入れ歯が多いのも残念ながら事実です。

また、自分で一から技工も含めて作ったことがある歯科医師ともなるほんの一握りの限られた歯科医師になるでしょう。

では、具体的に何が違うのでしょう。

  • ・当たり前ですが、きちんとした義歯の製作経験が多い歯科医師は知識、技術が安定している

    ・患者様のお口の中は個人差があるとはいえ、お口の中の解剖学的知識と多くのいい義歯を見てきた歯科医師は、
    義歯の外形をみてどこが大きくて、どこが足りていないのかパッと見て予想がつきます。

    ・それに加えて、自分で作った経験のある歯科医師は、技工士さんに伝えるポイントも、エラーが生じやすい
    部分もしっかりと伝えることができます。何といってもほとんどの技工士さんは直接患者さんのお口の中を
    みることがありません。歯科医師からのコメントと模型の情報しかありません。

3.技工士さんの力

どんなに義歯に精通した歯科医師でも、イメージ通りに再現してもらえなければ、いい義歯を作ることはできません。
すごくいい型どりをしても、技工士さんが好きな形でなんとなく作っていてはとても残念な結果になってしまいます。

大学病院時代に一緒だった、義歯外来の歯科医師達と勤務医時代に話していたときよく出た会話ですが
「あそこの病院ではいい義歯は作れない。」「あそこの病院ならそこそこのものが作れる。」「あそこだと厳しいからこの症例は
自分で作るわ。」などなど、

提携している技工所によって、同じ歯科医師が作っても、仕上がりにかなりの差がありました。

ちゃんとした義歯を作った経験があまりない技工士さんは歯科医師が伝えたことの意味が分からないことも多々あります。
理想としては、歯科医師と歯科技工士が共通のイメージをもち、双方が意見しあえるのが最も理想的な形だと思います。

4.入れ歯の調整力

前述のとおり、入れ歯は必ずといっていいほど調整が必要になります。

実際大学病院の義歯外来ではでは、教授も含めて新しい義歯の装着日と同時に調整の予約も取っていました。
状態にもよりますが、1日後、3日後、1週間を基本として最初は痛みが出ることを前提としていました。

もちろん稀に調整に来ていただいた時に全然痛くなかったといってくださる方もいましたが、そのほうが稀です。

とはいっても、全てが運任せではなく、製作の過程で、可能な限り誤差をなくし、
どこに咬んだ時の力の負担を求めて、痛みが出にくくするか、咬んだ時にどうすれば安定するかなど、
後の調整が楽になるように様々なことを考えて一つの入れ歯は作製されています。